日本におけるSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)の利用者数は、8000万人を超えるともいわれています。
もはや「誰もが利用している」といっても過言ではないSNSですが、誰とでも気軽にコミュニケーションが取れる反面、さまざまな負の側面が浮き彫りになりつつあります。
「インフルエンサー」と呼ばれる人たちの投稿を見て、その派手な生活ぶりに劣等感を覚えたり、あるいは、名前も顔も知らない誰かに嫉妬心を抱いてしまうケースが後を絶ちません。
SNSをチェックする度にストレスを感じるような状態が長く続くと、「SNS疲れ」から最悪の場合、心身に不調をきたしてしまう危険性すらあります。
そこで、SNS疲れは一体なぜ起きてしまうのか、SNSに疲れてしまったときはどのように対処すればいいのかについて解説します。
SNS疲れとは?
SNS疲れとは、ソーシャルサービスにおけるコミュニケーションに、精神的苦痛やストレスを感じている状態を指します。
SNSはテレビよりも情報伝達スピードが早く、その気になれば、自分自身が情報の発信基地となることさえ可能です。さらには、国境や人種を超えて、さまざまな人とコミュニケーションをとることができます。
SNSは文字通り、私たちの暮らしを大きく変えました。その一方で、長時間SNSを利用することにより、知らず知らずの内にSNSに依存してしまう人が急増しているといいます。
とあるリサーチ会社がSNS疲れに関するアンケート調査を行ったところ、20代女性の実に65%が「SNS疲れを感じたことがある」と回答しました。
「新着メッセージが気になって他のことに集中できない」
「自分に対する悪口が投稿されていないか頻繁にチェックしてしまう」
このような悩みも、今となってはそれほど珍しいものではありません。
SNS疲れが起こる原因は嫉妬?
上手に使いこなすことさえできれば、極めて有用なコミュニケーションツールであるSNSですが、ストレスをため込む原因となってしまっては、元も子もありません。
SNS疲れの大きな原因の一つは「嫉妬」です。
ここからは、SNSが嫉妬心を生み出しやすいとされる理由と、嫉妬の感情がもたらす弊害について解説していきます。
SNSが嫉妬心を生み出しやすい理由は?
InstagramやTwitter、あるいはFacebookなどを活用している人は数多くいますが、こういったSNSサービスにおいては、フォロワー数や「いいね」の数が可視化されています。
自分の投稿には思うように「いいね」が付かず、フォロワー数も伸びないのに、同じような内容の投稿をした別の人が注目を集めていたら、人間の心理として嫉妬心が芽生えてしまうのも仕方のない話でしょう。
また、SNSでは日常生活の良い部分だけが切り取られやすく、キラキラした投稿が必然的に目立つ仕組みになっています。
そのような投稿をする人は、ネットスラングで「リア充」と呼ばれたりもしますが、当然のように人生は良い事ばかりではありません。人間は誰でも少なからず悩みを抱えているものです。
そのことを頭では理解していても、コンプレックスを抱える多くの人は、自分と誰かを比較せずにはいられません。そして、次第にSNS疲れを感じるようになります。
「嫉妬はつねに他人との比較においてであり、比較のないところには嫉妬はない。」という哲学者の名言がありますが、SNSには嫉妬心を生み出してしまう十分な要素が揃っているといえます。
嫉妬心が大きくなると…
ここ最近、巷(ちまた)で大きな社会問題となっているのがSNSでの誹謗中傷です。
総務省の発表によると、インターネット上の人権侵犯事件は、SNSの利用時間増加に伴い、ここ数年で急上昇しているといいます。
参考:SNS上での誹謗中傷への対策に関する取組の大枠について|総務省
2020年5月、女子プロレスラーの木村花さん(当時22歳)が、SNSで中傷されたことを苦にして自ら命を絶ってしまった事件は、社会に大きな衝撃を与えました。
また、つい最近の出来事では、タレントのりゅうちぇる(ryuchell)さんが急逝した件も、SNSでの誹謗中傷が原因ではないかとささやかれています。
SNSを活用すれば、普段接する機会のない有名人が相手でも、自分の思いを直接届けることができます。とても便利な反面、この仕組みを悪用すれば、特定の個人に対する嫉妬心のはけ口になってしまう危険性があります。
ただし、嫉妬心からSNSで特定の個人を攻撃しても、最終的に心が満たされることは決してないでしょう。攻撃された側も含め、SNS疲れを引き起こす原因となってしまいます。
SNS疲れが起こる他の理由
もちろん、SNS疲れの原因となり得るものは、嫉妬心の他にもたくさん考えられます。
ここからは、SNS疲れが起こるその他の理由について、いくつか紹介します。
他人と自分を比較して落ち込んでしまう
先ほどもご紹介したとおり、SNSは他人と自分とを比較しやすい一面があります。
キラキラした他人の投稿を見て、「私って本当は幸せじゃないのでは?」という不安を抱き、SNS疲れに陥ってしまいます。
気分が落ち込んで何もやる気が起きなくなってしまう人も中にはいるかもしれません。
フォロワー数やいいねの数を気にし過ぎてしまう
建前上は「気軽にSNSを楽しんでいる」と言っても、フォロワー数やいいねの数を気にしている人は意外に多いものです。
他人の注目を集めたい一心で、あえてSNSに嘘の投稿をしたり、飲食店などで迷惑行為を行う人が、「SNS炎上事件」としてたびたび話題に上がります。
「自分の評価が数字として可視化されている」という感覚なのかもしれませんが、そういった言動でどれだけフォロワー数やいいねの数を集めても、実際の社会的な評価には結びつきません。
数字に振り回されて一喜一憂していると、理想と現実のギャップからSNS疲れを引き起こしてしまうでしょう。
ネガティブな情報を目にしてしまう
ネガティブな投稿を目にしてしまうのも、SNS疲れの原因になります。
Twitterなどには、センシティブな内容の画像や動画を非表示にする機能が備わっていますが、それでも、タイムラインに意図しない情報が流れてくることはあるでしょう。
タイムラインはSNS独自のアルゴリズムで投稿が表示される仕組みとなっているため、他人の愚痴や悪意のある投稿など、見たくない投稿から離れることが難しいのです。
ネガティブな情報を何とか避けようとして「いたちごっこ」を続けていると、余計にSNS疲れが悪化してしまう場合もあります。
SNSのコミュニケーションに疲れてしまう
SNSは気軽に他人とコミュニケーションをとれることが最大のメリットですが、それは同時に最大のデメリットともなり得ます。
フォロワーの投稿にいちいちリアクションを返さないと相互フォローを外されてしまうのではないかと不安で、こまめにSNSをチェックしている人も多いことでしょう。
このように、無理をしてまでSNSに対する依存度を上げざるをえない状況を自ら作り出すことが、SNS疲れの原因となってしまうかもしれません。
SNSと適度な距離感を保ちつつ、気持ちの切り替えを行うための工夫が必要となります。
SNS疲れをしないためのコツ
SNS疲れが起こる原因について、ここまで解説してきましたが、SNSと適度な距離で付き合っていくにはどうすればよいのでしょうか?
最後に、SNS疲れを解消するコツについて、いくつかご紹介します。
SNSの通知機能を「オフ」にする
仕事中もSNSの通知音が常に鳴りっぱなしの状態にしていると、集中するべき時ですら、SNSのことが頭から離れなくなってしまうかもしれません。
SNS疲れを改善する手段として、プッシュ通知は「オフ」に変更しておくことをおすすめします。
新着通知に振り回されないように対策することで、SNSとの距離感を自分の意思でコントロールすることが容易になります。
SNSの投稿をチェックする時間に決まりを作る
SNS疲れを改善したいけど、今現在の生活スタイルを大幅に変えたくないという人におすすめなのが、SNSをチェックする時間に決まりを設けることです。
「SNSへの依存を減らそう」といくら頭で考えても、自分の中でのルールや線引きがはっきりしていないと、結局は際限がなくなってしまいます。
具体的なスケジュールを立てる前に、まずは自分が毎日どれくらいの時間をSNSに費やしているのか客観的に確認することをおすすめします。ひょっとすると、意外に多くの時間を消費していることに驚くかもしれません。
SNSの利用状況が確認できたら、その次にSNSをチェックする時間をあらかじめスケジュールに組み込んでおきましょう。
例えば、以下のように時間を区切り、その時間帯だけSNSを確認するようにします。
- 7~8時(通勤時)
- 12~13時(お昼休み)
- 19~20時(夕食後)
このように、きちんと時間を設定することで、自然とSNSの確認が適切な頻度へと変わっていくでしょう。
SNSから離れてみる
SNSから一定期間離れてみるのも、SNS疲れを解消する方法としては効果的です。
まずは、一週間程度で様子見し、そこから徐々にSNS離れの間隔を延ばしていくといいでしょう。
仮に、自分が決めた期間内でSNSから完全に離れることができなかったとしても、ある程度は自分自身を客観的に見直す機会が生まれ、気分のリフレッシュにもつながるはずです。
SNSから離れる際、フォロワーに心配をかけないように、あらかじめ「〇〇日間お休みします」などと、お知らせしておくと良いでしょう。
SNSを削除する
SNSの投稿がどうしても気になって、他のことが手につかないといった状態であれば、物理的にSNSを見れない状態にしてしまうというのもひとつの手です。
とはいえ、いきなりSNSのアカウントを削除してしまうことには抵抗感がある人も多いでしょう。そこで、スマートフォンのホーム画面などからSNSをアンインストールすることをおすすめします。
InstagramやTwitterなどは、アプリをアンインストールしてもアカウントがそのまま残ります。SNSを再開したいときは、再びストアからアプリをダウンロードすればいいのです。
SNSを見れなくなって、はじめは辛いと感じるかもしれませんが、依存対象を遮断することは、SNS疲れを解消するためにもっとも効果的な方法の一つです。
本来好きな趣味に費やす時間が増えて、そのうち充実感の方が勝るようになっていくでしょう。
まとめ
今や、SNSは私たちの生活に欠かすことができないコミュニケーションツールとなりました。上手に活用すれば、交友関係の輪を広げたり、情報発信の拠点として大いに役立つことでしょう。
しかし、SNSに過度な依存をしてしまうと、嫉妬心などからストレスにつながりやすく、「SNS疲れ」の原因ともなってしまいます。
SNS疲れを改善するには、自分自身をコントロールする意思が大切です。プッシュ通知をオフにしたり、投稿をチェックする時間などをしっかり決めて、SNSと適度な距離感を保つことを心がけましょう。
「SNSをこのまま続けても自分のためにならない」と強く感じるようであれば、思い切ってSNSのアカウントを削除することも検討してみるといいでしょう。
SNSへの投稿を仕事としている人も中にはいますが、そうでない人の方が圧倒的に大多数なのです。
SNS疲れの原因を把握した上で、あくまでもSNSは自分の生活を充実させるための補助的なツールとして考え、必要以上にのめり込まないように気を付けてください。
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